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木星帯状流の風速プロファイルの作成

木星帯状流の風速プロファイル

木星は地球の半径の約11倍の半径を持つ巨大な惑星です。 それにも関わらず自転周期は約10時間と速いため、遠心力によって扁平な形状をしています。 その様子は地上の望遠鏡で観察してもよく分かるほどです。

木星の特徴と言えば、表面に見られる独特な縞模様でしょう。 表面と言っても、木星は地球や火星のような地表面を持たないガスで出来た惑星であるため降り立つことは出来ません。 従って我々が目にする木星面の模様と言うのは、木星の大気に含まれる雲の最上層の様子を見ていると言う事になります。 地球の雲を考えれば分かる通り、雲のある所に風が吹けばその位置や形状は変化します。 木星の場合も例外ではなく、定期的に観察をしていると縞模様や斑点等の位置・形状が変化しているのが分かります。 その様子を直感的に知るために、過去にNASAの探査機が撮影した画像を使って作成されたアニメーションを紹介します。 土星探査機カッシーニが木星をスイングバイした際に撮影した画像を展開図にし、時系列順に表示するアニメーションです。 このアニメーションを見ればわかるように、縞模様の境界で速さが極大になる東西の風の流れが交互に並んでいます。 このような風が木星面上に存在する事は昔から知られており、緯度ごとにどの程度のスピードであるかを示す風速プロファイルが作成されてきました。 図1はその一例です。


図1 木星帯状流の風速プロファイル(Porco et al. 2003). 左の黒線はカッシーニより得たデータから,赤線はボイジャー2号より得たデータから作成された. 横軸が東西方向の風速, 縦軸が緯度を示している.

大まかな傾向としては、いわゆる赤道帯(EZ)の両端に速い東風が吹いており、それ以外では赤道帯ほど速くないものの、南北方向に交互に風速が極大・小をとっていることがあげられます。 また23Nで東向きに最大の風が吹いているのも分かるでしょう。 ここで注目すべきは、カッシーニとボイジャーによって得られた風速プロファイルに、小さいながらも違いが見られる事です。 まず今述べた23N付近の最大風速は、ボイジャーのデータによれば180m/sであったのに対しカッシーニのデータでは140m/sに減少している事です。 また30N付近の極大は西向き10m/sから20m/sに増加していること、また40〜55Nの極大の位置は北にシフトしていることなど、一見恒常的なパターンのように見える風速プロファイルにも変化があると言う事が分かるでしょう。 帯状流の風速プロファイルに関してより詳しい事は文献2の第3章に記載されています。

風速プロファイル作成の試み

最近のアマチュア惑星観測では、木星に接近した探査機が撮影した画像と見違えるほど高解像度の画像を撮影出来るようになりました。 すなわち、かつてのスケッチ観測では捉えきれない小さな模様まで追いかけることが出来るようになったのです。 ここで私はそれらの高解像な画像を使用することによって、先述した木星帯状流の風速プロファイルを作成することが出来るのではないかと考えました。 もし良い精度で風速プロファイルを作成する事が出来れば、重要なデータを構築する事が出来るかもしれません。 そこで風速を計算し、先に述べた風速プロファイルの作成を行うプログラムを作成し、何点かのデータを用いて風速プロファイル"もどき"を描いてみました。


図2 出力される風速プロファイル

図3 準備したデータ

例で示したデータは2012年の実際のデータを用いています。 たった6点のデータですが、図1のデータともそれなりに整合的な気がします。 各年ごとの比較を行うにはもっと南北に広く、またデータの精度を上げるために一つの模様についてたくさんのデータを計測する必要があります。

参考文献

1) Carolyn C. Porco et al. Cassini Imaging of Jupiter's Atmosphere, Satellites, and Rings. Science 299, 1541 (2003)
2) John H. Rogers. The Giant Planet Jupiter. Cambrdge University Press (1995)

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